比較

どちらを選ぶ?新幹線でしょ!
雑誌「QueChoisir(ク・ショワジール=どちらを選ぶ?)」は、利用者の目線でフランス国鉄(SNCF)の高速鉄道TGVと日本の新幹線を比較した。結果は、TGVにとって残念な内容になったようだ。この結果は、フランス人には驚き!—では必ずしもない。
TGVの評価が悪い点は、チケットのシステムから始まる。「日本では切符にパンチを入れる義務がない。でも、実際のところ、フランスでも切符には日付も座席番号も記入されているというのに、いまだに何の意味があるというのか?」。同記事は、新幹線の利便性(最も運行の多い路線では10分毎)や、プラットホームで人がごった返すことがないことに触れている。記者は、日本ではエスカレータが全く故障していないという「素晴らしい・・・」ことに気付いたようだ! 続いて記事は、新幹線が高いという神話を打ち砕き、フランスの「空席があり次第」という予約方法など奇妙なシステムに対し、「必ず座席を確保する」日本の当たり前の予約方法とその料金を賞賛している。次に「遅れ」に目を向けるとどちらが優れているか一目瞭然だ。フランスTGVの延着は年間合計で550〜600日であるのに対し、新幹線のそれは数分程度だということである。確かに新幹線の延着は払戻しされない。しかし遅れがないのだから必要ない…。 頻繁に津波や地震が頻発する国であるにも拘わらず、この素晴らしいサービスが提供されているとク・ショワジールは説明している。快適さの面では、プラットホームから新幹線に乗り込むのはずっと容易であり、車内はずっと広く(あの有名な「リバーシブル座席」!)、揺れと騒音はTGVよりずっと少ない。「日本人に質問をしてみたところ、(しかしフランス人の読者はそんなに広いのかと疑うだろうが・・・)蛇口からは常に水が流れるようになっているし、トイレには紙がある」と明らかにトラウマを持ったク・ショワジールの記者は書いている。

新幹線車内の食事は世界的に有名な「SNCFのサンドイッチ」に比べ、「値段が手頃で美味しい」弁当がいつも用意されていると記事は述べている。「最初の第一歩は、至極簡単なことであるが、SNCFは現実を正面から見ること。(略)日本人のように “頑張って” と言っておこう」 と記事は締めくくった。

大きな1%
今日を代表する世界のベストセラー本は、フランス人が書いたの経済書である。仏人経済学者トマ・ピケティ著「21世紀の資本論」は、20世紀における経済格差の歴史的上昇について述べた著作で、瞬く間に経済思想の新しい古典書籍としての地位を確立した。和訳はまだ刊行されていないが、既に日本のプレスに紹介されている。彼は、収入格差は1945年以降常に拡大し続けていると主張。最近のOECDの研究もこの命題を裏付けしている。報告書はまず各国を、日本やフランスのように格差是正を目指している国と、その意思を止めてしまったように見える国に分類する。後者にはアングロサクソン諸国も含まれる。また、米国の経済成長は1975年以降全体的にフランスの成長を上回っているが、一方でフランスにおける収入の伸びは人口の99%が貧困層である米国の収入の伸びを上回っていると調査結果は報告している!
2012年、米国で最も豊かな富裕層である1%の人口は、米国の課税対象収入の20%に該当した。この数字は日本では10%、フランスでは8%である。OECDの観測によれば、この比率は1990年以降、フランスと日本ではほとんど変わっていないが、日本の最も豊かな富裕層である0.1%の人口は、フランスの最も豊かな0.11%の人口の2倍以上の課税対象収入を得ているという。こういった事情を背景に、フランスは最近になって最も高収入への課税率を引き上げた。日本も2015年に同様に行う予定だ。一方で、英国とアメリカは最も高い収入への課税を引き下げた。

企業も歳をとる!
2013年、フランスでは538,100の起業が登録され、日本では1,146,000であった。人口定数を考慮すれば、フランスと日本両国は「起業立国」と言えるだろう。しかし、傾向は同じではない。フランスでは起業登録数が増えているが(2006年以降+88%)、日本では徐々に減少している(2006年以降ー38%)。三菱UFJモルガン・スタンレー証券のエコノミスト佐治 信行氏は最近のレポートで日本の企業は歳を取っていると指摘している。日本企業の平均年齢は現在、35.6歳(製造業では平均年齢は45.6歳)である。日本企業の88%は10歳以上、最も企業の平均年齢が高い県は山形県(平均年齢42歳)。最も若い県は、沖縄県である(平均年齢26歳)。

東京はすでに世界ですばらしい街じゃなか!
舛添要一東京都知事は、今からオリンピック開催の年2020年までに日本の首都、東京を世界で最も良い街にすると公約した。問題はすでに1位であること・・・。スペインのビジネススクールIESEが種々雑多な基準(都市計画、社会の緊密な結びつき、交通インフラ、環境、国際性等)をリストにして135の都市を研究した結果「ダイナミックな街指数」を刊行した。調査ではロンドン、ニューヨークを抑え東京が第1位にランクイン。日本の首都はテクノロジー、行政、経済、世界中の才能を惹きつける能力の面から世界で最も優れていると報告。パリは5位に過ぎず、大阪は8位だった。

笑って、あなたは日本人なんだから
日本の若者達は自分に自信がない。首相官邸の調査によると、13歳から29歳までの日本人若者の中で、自分に自信をもっていると答えたのはわずか46%だった。それに対し、83%のフランスの若者、86%の米国の若者が自分に自信を持っていると回答している。将来は明るいと答えた若い日本人は62%だが、それに対しフランスは83%、アメリカは91%だった。若い日本人の66%のみが40歳になったとき自分が幸福であると考えているが、若いフランス人と若いアメリカ人においては87%である。

笑って、あなたは日本の学生なんだから
大卒で若者であることは、日本のほうがフランスより価値がある。雑誌「フィガロ・エチュディアン」によると2013年、フランスで学業を終え1年以内に就職した若い大学卒業者の割合は64%に過ぎなかった。日本の文部科学省によれば、日本においては2013年3月に学業を終えた学生の94.4%がすでに最初の職に就いている。東北地方に限って言えば、大卒の就職率は99%である。

日曜も、仕事をしなさい
フランスでは、日曜日に店舗の営業を行うか否かが大論戦になっているが、こんな物議は日本から見たら理解しがたいものである。日本には、週のどの日を休みにするかを定める規則は一切存在ない。法律が定めているのは各企業が週に1日を定休日にしなければならないということだけである。しかしこの限られた義務にも例外が見られる。
フランスでは法律が「勤労者の利益に沿って、日曜を週の休日として与えられる」と定めている。これに反して、例外も数多く、かつ非常に複雑である。適用除外となるのは、例えば業態(ホテル、病院)によるものであったり、時間(食品販売については午後1時まで)であったり、地域的(観光地)等々であったりする。
さらに、日曜日に休むことが公序良俗に反する場合やバーゲンの期間中は年間5回日曜営業する場合、年末の数日間など、ケースバイケースの適用除外もある。
適用除外の種類によっては、様々な代償が生じる場合がある。日曜の労働が義務的な場合もあるが、そのただボランティア的な労働のケースや賃金が倍額支払われたり、代休が与えられるケースが考えられる。
反対に日本では、もし日曜以外の日が週の定休日と決められていれば、日曜日は通常の賃金が支払われる。日本は、(規約上の休日である)週休日と(規約上の休日とは異なる)2日目の週休日を定めることを義務付けている。規約上の休日の労働には、通常賃金に1.35倍乗じた賃金を給付しなければならない。もし、規約上の休日が例えば木曜に定められており、日曜が追加の休日であるならば、日曜に働くことは通常の時間外労働と同様に1.25倍の率を乗じた賃金が支払われる。
時間外労働は代休によって補償することも可能である(日曜日1時間の労働に対し、1時間ではなく、1.35時間の休みが代わりに与えられる)。

ジャン‐デニス マルクス、ベーカー&マッケンジー法律事務所東京青山・青木・狛法律事務所
(外国法共同事業)

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