エネルギー、同じ目標に向かって
在日フランス商工会議所主催のカンファレンス『エネルギーの転換:新しいソリューションと効率化』 に、未来のエネルギーシステム開発を目指す産学官の関係者が集結。生産から使用まで、各人が持ち寄ったソリューションをぶつけ合い、忌憚のない意見が交わされた。
7月4日に生まれて
去る7月4日、在日フランス商工会議所はエネルギー分野の牽引役 たる関係者が一堂に会するテーマ別年次カンファレンスを開催し た。経済産業省の小山雅臣氏はこの国につきまとうエネルギー供 給問題への対処法として耐久消費財や日本家屋におけるエネル ギーの効率化を提案、また2030年を目処に国のエネルギーミック スに占める再生可能エネルギーの割合を引き上げるとし(16%か ら24%へ)、水素インフラの整備拡大に向けた官民の連携などに も言及した。
フランス環境連帯移行省から参加したステファン・ルデュ氏が 紹介したのはフランスの掲げるエネルギー計画だ。具体的には 2030年を目処に温室効果ガス排出量を40%削減し、さらに2028 年までに化石エネルギーの使用量を35%、2035年までに原子力 エネルギーの使用量を50%それぞれ削減するとしている。「2023 年までにすべての石炭火力発電所を閉鎖する予定です」とルデュ 氏。同国の計画は、今なお石炭に依存する日本とは一線を画すも のだ。一方水素エネルギーを巡る日仏両国の関心は一致している。 「水素はカーボンニュートラルを達成するために不可欠です」と ルデュ氏は語る。
民間セクターもこの計画の実現に向け足並みを揃える。「エネル ギー需要は1.5倍に膨らみますが、その一方で汚染を半減させな ければなりません。つまりエネルギー効率を3倍高める必要があ るわけです」と説明するのは、シュナイダー エレクトリック ホール ディングスの青柳亮子氏。エンジーのジョン=フランソワ・リビイエ 氏は「脱炭素化、分散化、デジタル化」を強く訴え、建物のコンセプ トとスマート管理という両輪が必要だと述べた。
サンゴバンのフランシス・ショレー氏は「全エネルギー消費の3分 の1を占める」日本の建物の消費量削減に向け総力を挙げて取り 組む必要性を訴え、併せて断熱による快適性の向上や健康増進 についても強調している。株式会社住環境計画研究所の鶴崎敬 大氏は「一生のうち1~2度マイホームを購入する機会がやってき ますが、良い決断をするのはなかなか難しいものです。住居供給 の仕組みを改良していく必要があるでしょう」と呼びかけた。
「一生のうち1~2度マイホームを購入する 機会がやってきますが、良い決断をするの はなかなか難しいものです」
新規参入
カンファレンスには同セクターへの新規参入者も参加した。「弊 社ではここ5年間で50棟のパッシブハウスを建てました」と胸を張 るのは、夢・建築工房の代表取締役、岸野浩太氏。水上ソーラー パネルを販売するシエル・テール・ジャパン社の代表取締役、森一 氏は、2013年に「社員3人からスタート、それが今では100人規模 に成長しました」と日本国内市場における同社のサクセスストー リーを紹介。洋上風力発電用浮体基礎の専業企業イデオルの山 田睦氏は、同セクターにおけるフランスの先進的な取り組みを紹 介し、日本におけるその潜在力について説明した。ブイグ アジアの ピエール・ムスティエール氏は、系列会社が開発した太陽電池埋 め込み式の路面型太陽光発電設備『WATTWAY』の日本における 運用に触れ、「これにより道路には第二の機能が付与されること になります」と期待を寄せる。エア・リキードで水素エネルギー事 業部長を務める那須昭宣氏は、日本が積極的に推進する水素エ ネルギーの普及に向けた同社の貢献を紹介。またエナジープー ルジャパン社の代表取締役社長である市村健氏は「事業者、メー カー、そして各家庭…… 誰もが責任を負っています。私たちは皆 何らかの形でエネルギー業界に参画しているのです」と語った。CY