お宿探しも楽じゃない

海外の不動産投資家を惹きつけるホテル市場

押し寄せる投資家たち
今年2月、米投資ファンドのベインキャピタルは、全国29か所の温泉・宿泊施設を家族経営で運営していた大江戸温泉ホールディングスを約500億円で買収することで合意した。年間500万人が利用するこの温泉旅館チェーンに、ベインキャピタルは大幅な収益拡大を見込んでいる。東京・お台場の「大江戸温泉物語」はアジアの観光客に特に人気があり、利用者の平均20%を常に外国人が占める。ベインキャピタルは、この数字は、韓国、中国、台湾、タイからの観光客の増加と国際マーケティングの強化によってさらに伸びると見ている。「昨年に海外から日本へ来た観光者数は1,340万人。一年で約30%増加しています。今年最初の数ヶ月の結果からも、この成長はさらに続くものと予想しています」とホテル・旅館専門不動産鑑定評価会社、日本ホテルアプレイザルの北村剛史氏は語る。
大幅な円安を主な要因とする訪日外国人の増加に期待し、大手不動産投資会社は一斉に、長年見向きもしなかった市場に機会を探し始めた。「昨年、日本のホテル資産取引数は101件に達しました。これは、2008年から2010年までは年間40件以下だったことをふまえると目覚ましい数字です」と森トラストの伊達美和子専務取締役は指摘する。リアル・キャピタル・アナリティクスの推計では、2014年の日本のホテルへの投資額は2,970億円で、2007年以降で最高額となった。「金融危機の後、日本のホテル投資市場の流動性は著しく低下しました。同部門の投資家は、不動産プライベートファンドに限定されていたのです」とジョーンズラングラサールの寺田八十一氏は説明する。「今日、投資家の属性は多様化しており、市場が以前よりも健全に機能していることが伺えます。」

進む円安、上昇する宿泊料金
ホテル市場で短期の収益高を見込んでいる海外投資家にとって、円安は当然追い風にうつる。「2012年以降、客室稼働率は大幅に上昇し、それにより宿泊料金が値上がりしています。東京では1泊あたりの平均料金は19,000円にまで上昇しています」と北村氏は説明する。一方、ビジネスホテル業界は、インバウンド需要の影響がほとんど見られず、1泊あたり平均で1万円程度で推移している。
観光施設も、需要と供給のバランスにより、料金がさらに値上がりすることが予想される。「緊迫した段階にさしかかっています。現在、国内で確保できる客室数は、旅館で735,271室、ホテルで827,211室しかありません」と北村氏。観光客に人気のある東京や大阪では、投資家の熱い視線にもかかわらず、客室不足が懸念されている。「沖縄を除いて、観光都市の魅力的な地域には新しいホテルを建設する場所がほとんどないのです」とヒルトン・ワールドワイドのティモシー・ソーパー日本・韓国地区運営最高責任者は分析する。
1963年に日本に進出したヒルトングループは、国内に3つのブランドで11のホテルを展開しているが、さらに2つの新しいホテルをオープンする予定である。「どちらも基本的には既存の施設を再利用するコンバージョンです」と同氏は語る。ヒルトングループは、ホテル日航東京の運営を引き継ぎ、今年10月に客室数453室の「ヒルトン東京お台場」を開業する。

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