ビットコインのしっぺ返し

ビットコインのしっぺ返し

日本はビットコインの避難所に。驚異的現象への回帰 

浴びせられた冷水
2014年春、東京渋谷のとあるカフェ。ビットコイン支持者たちが開く月例交流会への参加者はまばらだった。月例交流会の一ヵ月前に起きたクリプトカレンシー(仮想通貨)の最大手取引所マウントゴックスの前代未聞の破綻劇は、動き出したばかりの仮想通貨市場に冷や水をかけた。メディアは消えた資金や、ハッキングされた数百万の通貨、そしてフランス人経営者の裁判の行く末ばかりをこぞって取り上げた。ビットコインのみならず、Ethereums(イーサリアム), Ripple(リップル )、Litecoin( ライトコイン)が中国、韓国、欧米で売りたたかれるだろうという噂がまことしやかに流れた。

三年後、今や日本個人投資家の代名詞となった「ミセス・ワタナベ」が、この予測を打ち消した。昨年、日本は再び世界最大の仮想通貨市場となった。クリプトコンペア社によれば、2018年1月中旬、37%のビットコインが円建てで取引された。2017年末、この比率が瞬間的に5割近くに及ぶ日には、世界市場が東京市場の動きに連動することもあった。200万人近い日本人が市場に戻り、資金をつぎ込んでいるとみられる。「きっかけは、昨年4月に改正資金決済法が定められたことです」と、東 晃慈氏は説明する。
中国は投資熱に手が付けられなくなり、早期に国内取引所閉鎖を決めたが、日本は禁止措置を退け、厳格な規制対処策を選んだ。事業年度初めから新法が施行され、複数の仮想通貨が法律に基づく支払い方法として承認されている。この新しい枠組みに基づき、金融庁は早速9月から仮想通貨取引所11社を登録した。このうち最大手bitFlyer(ビットフライヤー)は、100万人の顧客を抱える。信頼のお墨付きを得て、 これらの業者は管理システムの強化、情報セキュリティー、全利用者のID把握に責任を持つことになった。

民間普及
この勢いに乗り、さらに数十社が登録を待つ。Bの文字が白抜きされた小さな黄色いステッカーは、東京都心で見慣れたものになってきた。ビックカメラ全店では、スマートフォンやテレビゲームをビットコインで購入することができ、Bitcoin.com( ビットコインドットコム)ウォレット上のQRコードを使って決済可能な銀座のすし店も登場した。中古車専門の自動車販売会社IDOM Inc.(イドム)も今後、外国製の高級4ドアセダンを上限価格1億円(75万ユーロ)までビットコインで購入することができるという。「ビットコインステッカーはあちこちで見られます。市民権を得始めているのではないでしょうか」と、香港拠点の仮想通貨取引所を運営するゲーテコインの最高経営責任者オレリアン・ムナン氏はいう。「行政承認のお墨付きがでて、新しい投資家の波が押し寄せています」と、東 晃慈氏は自身のブログで断言する。これらの通貨は、次第にきな臭いものではなくなりつつある。国内で購入される仮想通貨量はまだまだ逸話的な量に過ぎないが、相場は高騰している。「ブロックチェーンの革命的インパクトを理解し関心を抱いているのは、ごく一部の投資家に過ぎず、大多数はこれら通貨の投機な側面しか見ていません」。日本のメディアで、しばしば「ミスビットコイン」と謳われる株式会社グラコネ代表取締役 藤本真衣氏は語る。ドイチェ・セキュリティーズ・リミテッド東京支店のチームが新規投資家のプロフィールを調べたところ、これまで外貨市場に預金をつぎ込んでいた30代、40代男性が多数を占めていることがわかった。1990年代のバブル崩壊以来、株式市場に懐疑的で、ゼロ金利下での金融商品に飽き足らない日本投資家は、世界の外国為替市場で非常に大きな存在となっており、彼らは仮想通貨に今後のさらなるポテンシャルを見出している。

行政の反応
日本人個人投資家のビットコイン熱は確かなものだったが、韓国でもそうだったように、彼らは当時まだ高騰前だった別の通貨にもすぐに興味を持った。特に名の知られたリーダーたちの通貨を重要視した。ブロックチェーンの分散型管理システムをほとんど理解していないにも関わらず、小口投資家達は、イーサリアムの創始者ヴィタリック・ブテリン氏がソウルや東京を訪問すると安心し、圧倒的多数でこの通貨を支持した。2017年、世界市場においてイーサリアムは、なんと100倍まで成長した。一方、ビットコインの成長率は15倍にとどまっている。
年始以来、相場は荒れている。もう一つの仮想通貨のアジア大市場、韓国の規制強化の噂が流れているためである。日本政府よりもやや消極的な動きをみせていた韓国政府は、これら仮想通貨に包括的な規制の枠組みを設けようとしている。しかし関係各省庁の意見が一致しない。中国式禁止策に賛成する法務部(法務省)は複数の反ビットコイン措置を出した。テクノロジーの本質を知らずに手をつけたせいで家族や、高校生、老女を破産させてしまうカジノのようなものだと彼らは例える。あまりに多くの宣言に、仮想通貨に投資する国内200万の市民が蜂起し、20万人以上が反自由政策で市場を潰さないようムン・ジェイン大統領に訴え、韓国大統領府の請願サイトに署名した。ブロックチェーンといった新技術についていけない国と思われるのを避けたい政府は、なんとか法務部の圧力を抑え、日本政府の枠組みに近い施策を提案する企画財務部(財務省)の勧告に従っている。「党がしたいようにする中国とは違い、韓国と日本政府は、国民の意見や相場の急激な下落が与える影響を配慮しなければならないのです」と、オレリアン・ムナン氏はまとめた。

このページをシェアする Share on FacebookShare on TwitterShare on Linkedin