熱狂的な日本ブーム

観光産業、爆発的な急成長!業界関係者から聞いた「ここだけの話」

パークハイアット東京総支配人、フィリップ・ルデサー氏
観光業界は目覚ましい復活を遂げています。福島の大事故からわずか4年で、当ホテルは客室稼動率80%を達成するまでになりました。外国からのご来訪が非常に多いのですが、その一方で日本人のお客様もしっかりつなぎとめられるよう配慮しなければなりません。円安の影響で、都内のホテルの宿泊料金は、外国人観光客にとって大変割安となっています。我々は他国の2つ星~3つ星相当の料金で5つ星クラスのサービスを提供していることになります。もう一つ、人材確保という課題にも直面しています。ホテル業界への就職を希望する日本の若者は少なく、しかも新卒者の多くは英語を上手に話せません。
今後、宿泊料は上昇し、観光客も(国内の)未開の訪問先へと流れていくでしょうから、お客様が殺到する今の過熱ぶりもいずれ落ち着いてくるのではないでしょうか。事実、東京と京都に次ぐ「第三の訪問地」を求める観光客が増えてきているように思います。



メルキュールホテル銀座東京(アコーホテルズ)東京地区総支配人、カメル・セナジ氏
現在の状況は複数の要因が一度に作用して生じたものですが、中でもアジア諸国からの観光客に対するビザ発給条件の緩和と円安がもたらした効果は絶大でした。世界で最も物価の高い都市ランキングで1位の座を占めていた東京がここ数年の間に11位まで後退するなど、日本はもはやお金のかかる旅行先ではなくなったのです。ビジネス旅行は増加し、近隣諸国との外交関係にも改善の兆しが見られ、さらに数年後にはラグビーのワールドカップやオリンピックの開催なども控えています。問題は宿泊施設の部屋数が足りないことです。今後数年間でオープンを予定している客室を合わせても将来の需要増に応えるのは難しいかもしれません。
私どもがお迎えしているお客様の82%は外国から来られた方々ですが、こうした状況はリスク含みでもあります。ひとたび災害が起これば彼らの足は一気に遠のいてしまいますから。福島で大きな事故が起きた時には、立て直すのに2年もかかりました。



八芳園イベント・コンベンションチーフマネージャー、石山敏朗氏
八芳園は日本情緒溢れる施設です。外客誘致の取り組みを始めたのは、こうした特徴を活かせるのではと考えたからでした。外国からのお客様は伝統的な日本料亭の雰囲気を非常に好まれますが、八芳園にはまさにそれがあります。世界のホテル・レストランが次第に画一化する時代にあって、こうした点は私どもの強みだと言えましょう。お客様1人1人のご要望に合わせて臨機応変に対応する私どもの日本式サービスは、他では決して真似できないものです。例えば当園では、5名様のお食事に給仕が3名付いたりもします。従業員の教育にもとにかく時間をかけています。また世界のホテルで働くコンシェルジュとの交流を深め、私どものサービスのあり方を発信しています。他では味わえない日本体験をお望みなら、是非八芳園へ!



JNTO(日本政府観光局)調査・コンサルティング担当部長、冨岡秀樹 氏
観光客の訪問先が東京、大阪、京都などに集中している現在の状況をどうするかが問題です。初めてフランスに行く人が最初の訪問地としてパリを選ぶのと同じように、訪日客はまず東京に足を運びます。そこで観光庁とJNTOでは新たな観光ルートの提案に向けて取り組んでいるところですが、ここで注意すべきは、この20年間日本の宿泊施設に大きな変化がなく、また顧客の多くは昔から日本人だったという事実です。彼らにとって外国人観光客は未知のお客様ですから、業界が対応に慣れていくには時間がかかります。外客が観光業の売上高に大きな割合を占めるのも時間の問題ですから、これに伴い業界にも大きな変化が訪れることになるでしょう。



ハイアット リージェンシー 東京総支配人、高沢朝美氏
ここ数年、当ホテル含め都内の客室稼働率は非常に高いレベルで推移しています。宿泊料金は、NYやパリ、ロンドンなど世界の主要都市と比較すると、まだまだ東京は低い水準です。特に春、秋シーズンには満室でお断りすることも多く、時期をずらしておいでいただければと思うこともあります。あとはもっと地方を訪れて欲しいですね。全国を見渡しても観光客の訪問先には偏りがありますから、地方の観光地間を結ぶ交通機関の整備を進めていく必要があるでしょう。例えば京都には大勢の観光客が押し寄せていますが、すぐお隣の奈良まで足を延ばす人はほとんどいません。電車の本数の少なさが足枷になっているのです。観光地へのアクセスが改善されて、まだ知られていない日本の風景や食の魅力をぜひ皆さんに発見していただきたいですね。

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