デフレーション、インフレーション、シュリンクフレーション

価格は据え置き、でも量が…… 

量が減る
「#くいもんみんな小さくなってませんか日本」――これはこの秋日本のツイッターで大賑わいを見せているハッシュタグ。一体何が起きているのか? 公式統計を見る限り、日本の物価は停滞、さらには下落しているように思われる。安倍晋三首相が過去5年間にわたり進めてきたデフレ政策にも関わらず、物価はほとんど上がっていない。OECDが発表した日本における8月のインフレ率(食料及びエネルギー除く総合指数)は…… 0%だった。
しかしそこにはより巧妙な(そして厳しい)現実が隠されている。確かに、商品価格は全体として見ると上がっていない。だが生活必需品への支出はインフレ気味だ。例えば食品価格は、安倍首相が就任した2012年と比較すると実に7.15%も上昇した。円安により日本の「加工経済」を支える原料の輸入費用が上昇すると、その影響をもろに受ける日本の製造業者は自らの利益を守ろうとする。宅配便のヤマト運輸はその莫大な業務コストにも関わらず27年もの間値上げを見合わせてきたが、今年になってついに140~180円の配送料引き上げに踏み切った。昔から大人気のアイスクリーム「ガリガリくん」も25年間続いた価格から10円の値上げを断行、メーカーはお詫びCMによるキャンペーンの必要性に迫られた。

こっそりと
ではどうするか? 値上げではなく、代わりに中身を減らすのだ。ネット上でも話題になっているように、日頃スーパーで手にする数々の商品が、値札を変えずにこっそりそのサイズを縮小していた。例えばチョコレート。全体の80%をガーナから輸入するカカオ豆の価格は2014年までの1年間で50%上昇したが、同年明治のミルクチョコレートは値段を105円に据え置いたまま1枚55グラムから50グラムに減量した。「アーモンドチョコ」は価格を変えず23粒から21粒へ。スライスチーズ「クラフト」も20枚(164グラム)から18枚(148グラム)に目減りした。牛乳はパックの大きさを変えず1リットルから900ミリリットルへ…… 「メーカーはこの方が飲みやすいと言うのですが、まさに牛乳の値段が上がっている時にそんなことを言い出すのは悪い冗談ですよ」と、ある日本人消費者は皮肉を込める。
「総務省が行っている物価指数変動の算出においては、他国同様、対象製品の価格が同じでも内容量が変われば理論上これを考慮していることになっています。しかし現実が正しく反映されているかどうかについては疑問が残ります。なぜなら、物価指数の算出に使用される製品は一部に限られており、対象から外れる製品もあるからです。例えば、『ビスケット』のカテゴリーは、マリービスケット100グラムを基準にしていますが、ここには内容量が減らされたチョコレートクッキーは含まれていません」とモルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅シニアエコノミストは述べている。内容量の減少はレストランなどでも観察される現象だが、こちらもセットメニューの価格は据え置かれている。

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