円相場:サムライという名の確実なバリュー
フランス人に人気のサムライ債(円建て外債)
再発見されたもの
遂に「アベノミクス」が、仏銀行クレディ・アグリコルや仏自動車ルノー、そしてポーランド政府にとってもプラスに働きそうだ。昨年4月、安倍晋三首相率いる日本政府は、経済再生の三本の矢のうちの二本目を放ち、国内の債券市場に激震を引き起こすとともに、国内外の大投資家たちに投資戦略の見直しを迫った。日本政府が発行する国債の70%以上を日本銀行が買い占めている今、この国債をこれまで大規模に購入してきた日本の大手銀行やファンド、保険会社は、確実で収益性のあるその他の投資先を探し求めた。そして彼らは、ここ数ヶ月で「サムライ債」、すなわち海外機関が売る円建て債券の市場に、再び目をつけたのだ。2013年初め、海外から同市場に対する需要は少なかったが、春以降、外国の政府や金融機関が、資金調達のため「サムライ債」を活用するようになった。
歴史的記録
外国の政府や金融機関は、米国の通貨政策危機の噂により世界の他の債券市場が動揺しているさなか、日本国内の安定した発行条件に惹かれたのであろう。去る6月19日、ベン・バーナンキFRB議長は米連邦準備制度理事会が量的緩和計画の縮小を検討し始めたことを明らかにしたが、それが主要な金融市場の動揺を招き、金利の変動を再び揺り起こした。日本での収益率は、米国の発表に影響を受けたとはいえ、その動き幅は限定的なものであった。この明らかな堅実さに心を動かされたのか、メキシコ政府は昨年7月に800億円分のサムライ債を発行。11月には、ポーランド政府が600億円を日本国内で調達した。
欧米の銀行も、大挙してこの市場にやって来ている。例えば仏クレディ・アグリコルは、初めてのサムライ債を5種(固定利付債 2、3、5年もの、変動利付債 3年、5年もの)に分けて計653億円分発行した。12月初めには、仏金融グループBPCEが、131,6億円、9億4,900万ユーロ相当という記録的金額で発行を行った。これは、フランスの銀行が出すこの種の債権としては最大級の発行額であり、また同市場での今年度最大の発行額である。2013年全体では、フランスの銀行は4,680億円分のサムライ債を発行しており、これは資金調達の方法を次第に多様化させている海外の金融グループによる総発行額の約3分の1にあたる。
有利な投資
サブプライム危機の後、ユーロ建て市場の数ヶ月にわたる閉鎖や、ドル建て市場での緊迫した状況に直面した機関投資家らは、割安で借入れのできる健全な日本の金融市場に注目している。ある専門家は、「この国には相当な額の貯蓄が存在しており、投資家は運用先として新しい金融商品を見つける必要があります」と語り、サムライ債の利息がとりわけ低く、欧州や米国で取引されている同種の満期支払額に比べて有利な場合があると指摘する。
今後数ヶ月間は、こうした経済的利点を求めて、多くの外国企業が同市場にチャレンジするようになるだろう。外国企業の借入額は、今のところ金融機関や諸国政府の発行額に比べると、まだ低い。だがもはや日本の日産に支えられているフランスのルノーは、すでにサムライ債発行の常連だ。その他にも、日本で実績があるエア・リキードやサン・ゴバンの二社も、とりわけ円建て決済の資金をまかなうため、この方法を利用している。フランス本国の他の工業系企業も、この資金調達方法を既に検討し始めているようだが、一般的にサムライ債の発行は複雑で時間がかかると思われている。日本の投資家たちが、サムライ債購入に先立ち、日本で開催される「ロードショー(投資家説明会)」の期間、来日する海外グループ執行部と面談したいと考えているからだ。