バカラが日本で歩んだ道

Baccarat

クリスタルに馴染みのない国でのバカラの信じがたい成功

象徴
日本におけるバカラの成功は、日本の顧客の知性の象徴である。それは日本市場をよく知っていたはずの専門家の予想を覆す結果だった。「バカラの日本法人バカラ パシフィックが設立された1984年当時、クリスタルガラスは日本人にまだ馴染みがありませんでした。当時の日本人は、漆や磁器を使っていたからです。クリスタルガラスは冷たいイメージがあり、日本人は割れるかもしれないものを贈答品として用いようとしませんでした。透明の花瓶を通して花の茎が見えるというアイデアも好みませんでした。」とバカラ パシフィック CEO ヤン・ガイエ氏は語る。バカラは今、日本で最も名高いブランドのひとつである。驚くべき数字だが、日本は単独で、バカラの世界での売り上げの35%以上を占める。
「バカラが提案するものは、単なるテーブルウェアではなくライフスタイルの一部である」という、長年にわたり日本でバカラを率いてきた前社長小川博氏の着想のもと、日本の生活習慣の中に入り込むことに成功した。とりわけバカラのグラスは、日本人にとって間違いのない贈答品のひとつとなった。バカラのグラスは6,500円からと高価だが、手の届かない値段でもない。売り上げの約80%は贈答用である。フランスでは80%が自家用であるのとは正反対だ。

新たな息吹
美しいバカラのクリスタルへの熱狂は、いくつかの現象により支えられている。例えば日本人のワインやシャンパーニュ好きが、それを飲むためのグラス探しにつながったこと。また、自宅に人を招くブームが起きていること。日本人は内気であるため人を招きたがらないが、リーマンショック以降、殻を破ってだんだんと自宅の扉を開くようになってきている。「私たちはお客様に手作りのバカラのグラスをただ飾っておくのではなく使うようにお勧めしています」とヤン・ガイエ氏は説明する。朝食からディナーまで、オレンジジュース、ウイスキー、ワイン、水をバカラのグラスで飲んで楽しむ機会は日常的にたくさんある。バカラ直営の「B bar」は、全てバカラのグラスで提供されるユニークな雰囲気を楽しめる。バカラの店舗は、インテリアをどのようにアレンジするかのインスピレーションを得るために最適の場所である。
250年の歴史のある同ブランドは、古典主義の澱みの中で窒息してしまうリスクを負っていた。しかし、フィリップ・スタルク、 デザインオフィスNENDO(ネンド)、さらには人間国宝の陶工、十四代今泉今右衛門といった、現代のアーティストや職人とのコラボレーションを重ねることで、新しさを維持することに成功した。また限定版のシリーズもある。「現在、私たちは、照明器具についても積極的にプロモーションを行なっています。その良い例が毎年恵比寿ガーデンプレイスでクリスマス期間に飾られるシャンデリアです」とヤン・ガイエ氏は説明する。ぜひ心に留めておきたい。

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